粉末回折データを正確に精密化 〜 従来と比べて2桁以上向上! 〜
福岡工業大学・北川二郎教授との共同研究で得た成果が、英国ネイチャー・パブリッシング・グループのオンライン科学雑誌 Scientific Reports (サイエンティフィック・リポーツ)に掲載されました。
リートベルト解析は、およそ半世紀前にヒューゴ・リートベルト博士(1932–2016)が開発して以降[1]、物質や材料の中に何の原子がどの位置に配置しているかなどを調べるために、基礎研究や応用開発で広く使われています。
しかし、値を正確に知ることができないという問題がありました。
具体的には、同一データでさえ、解析者や解析日に依存して算出値が異なります。例えば、ロデリック・ヒル博士の報告によると、専門家による解析結果においても、格子定数(下図の「長さa」)が0.01 Åの幅をもって異なる値が得られています[2]。測定日や装置の異なるデータでも同様です[3]。これまで、原因は解析スキルに依るものであり、そのため、特に格子定数を正確に算出するには、測定試料に高価な標準参照試料を混合して測定・解析を行う必要がある、と考えられていました[4]。
本研究では、ピーク位置シフトに着目しました。
ピーク位置シフトとは、実験上必ず伴う、理想のピーク位置からのずれです。その結果、原因は解析原理にあることを突き止め、従来の収束指標(Rwp)では正しい値が得られず、真の単位胞の相似形が得られていることを明らかにしました。これらを解決するために、追加の指標を提案しています。
追加の指標を用いれば、標準参照試料を用いることなく、誰でも正確(+/–0.00006 Å)に格子定数を算出することが可能となります。従来と比べて2桁以上もの劇的な向上です。基礎研究における実験同士や実験と理論計算の比較はもちろん、工業製造品の品質管理やものづくりにも活用することができます。
詳しくは以下の論文をご覧ください(Scientific Reportsの論文掲載ページに移動します)。オープンアクセスですので、どなたでも閲覧・印刷できます。
Scientific Reports 7, Article number: 15766 (2017).
A necessary criterion for obtaining accurate lattice parameters by Rietveld method Masami Tsubota 1 & Jiro Kitagawa 2
1 Physonit Inc., 6-10 Minami-horikawa, Kaita, Aki, Hiroshima 736-0044, Japan |
尚、本研究において、解析にはRIETAN-FP[5]を利用しました。本研究の成果を含む内容は国内特許出願中(特願2017-110500)です。
参考文献
- Rietveld, H. M. J. Appl. Crystallogr. 2, 65–71 (1969).
- Hill, R. J. J. Appl. Crystallogr. 25, 589–610 (1992).
- Röbelin, N., Powder Diffr. 30, 231–241 (2015).
- 紺谷貴之, 4章, 粉末X線解析の実際, 第2版, 中井泉・泉富士夫編著 (朝倉書店, 東京, 2009), pp.59–68.
- Izumi, F. & Momma, K. Solid State Phenom. 130, 15–20 (2007).
本件に関するお問い合わせ先
株式会社フィゾニット
代表取締役 坪田 雅己
Tel:082-822-0710
E-mail:info*physonit.jp (*は半角@に置き換えてください)